采女祭り

近鉄奈良駅から徒歩五分程の所には猿沢池という池がある。

 

池には柵などがなく、回りには柳が植えられ、近くの興福寺という寺の五重塔が臨めたりする。

 

浮御堂のボートに乗り損ねたあと、この池で采女祭りという行事が行われていることを知り、観に行くことに。

 

かつて奈良時代天皇の妾だったはるひめという女性が、天皇の寵愛が遠のいたことを嘆き、猿沢池に入水した。天皇のはその魂を慰めるために、采女神社をたてた。年に一度、はるひめの霊を鎮めるために、藁のおおきな扇を花で覆いつくした花扇と呼ばれるものを猿沢池に投じる行事が行われる。中秋の名月の日に合わせて。

 

今日は曇り空であいにく満月をはっきりと拝むことはできなかったが、池に小舟が浮かぶ様子は幻想的だった。

 

声楽家の方が舟の上からはるひめのエピソードを朗読と歌で語られたり、古代装束に身を包んだ人々が雅楽の演奏とともに舟で池を二周された。

 

奈良は古の都であることに思いを馳せた。かつてこの地に天皇や貴族がいて、はるひめのように不遇な女性も、現代と同じように居たのだろう。

 

初秋の涼しい風に吹かれてそんなことを思った。